可愛いもの探訪記 焔の月 三日目

　彼女には欠けている物が多すぎた。だから彼女は他者を求めた。

――――――――――――――――――――――――――――

ふ、ふふ、ふふふふふ。

この世界は素晴らしいな……。
少し歩けば可愛い娘達が歩いているし、あっちを見れば可愛い物がもふもふしている。
なんだここは。桃源郷か？
私は遠き理想郷へたどり着いてしまったのか？

いやいや、ここに辿りつけたのはまさしく僥倖。この世界で生きていくのも悪くは無い。
まぁ、そのためにはまずはこの世界を脅かす物をどうにかする必要があるわけだが。

しかし、それは二の次と言って良い。
まずはやはり、可愛い娘を探す事が先決だ！

可愛い娘はいないｋ(ry

はて？
なんだか省略されたような気がするが……まぁいい。
ここに来るまでにも随分と多くの可愛い子と知り合えた。
幸先が良いでは収まらんな、これは。

しかし。あの張り紙通りに進んできたが、森の中まで来てしまったが……。
周りにも何人かいるが、彼らもやはりアップルとやらを狙っているのだろうな。
ふむ。しかし、可愛い物を退治などして良いものか……。
私の可愛いを愛でる流儀には反してしまわないだろうか？
ううむ、悩むな。
しかし金銭は必要だ。可愛い子とデートするには無くてはならない。
人に迷惑を掛けているというなら尚更、止める必要もあるだろう。
そうだ、これはやむをえないのだ。仕方の無い事なのだ。
心を鬼にして挑まねばなるまい。

……うん？

この匂いは煙草か？
この世界にもあるのだな。だがやはり、この匂いはあまり好きになれん。
いやまて。ここは森だったはずだ。ふむ、一応注意はして置くべきか。
万が一にも火事になってはいけないからな。この森に住む可愛い物が困ってしまう。
あぁでも煙草を吸っているのが可愛い子だったらどうするか……。
まず注意して、それから煙草を辞めさせ、くわえるなら別のm――おぉっと、危ない。
まぁなんにせよその場合はお姉さん的にはちゃんと躾けねばならんな……ならんなー……うむ。
さぁっ！　
こんなところで煙草を吸っている悪い子は一体誰だーっ！

「……なんだてめえ」

それは私の台詞だ。何なんだ貴様は。

筋骨隆々とした体。赤い肌。ガラの悪い顔つき。林檎のような頭。

この胸糞悪い生物は一体なんだ？　まるで可愛くない。美しくすらないとは！
……まて、林檎？
まさか、まさかとは思うが……こいつがアップルなのか？
嫌だ、認めたくない！　私の妄想を返せ！

「おいぃ……一服中にジロジロ見てんじゃねぇよッ！！」

――よし、わかった。■そう。

可愛い物は正義。かといって、可愛くないものが悪とは言わない。
だが。

少なくとも貴様の存在は悪だ！