たまごブログ 別館
泣き虫忍者の日記帳(SicxLives ~Link&Link&Link~)
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焔の月 十七日目
――記憶
――頭が痛い。
ここ最近、以前の事を思い出す時間が増えてきた。
昨日も友人の夢を見て、また回想していたくらいだ。
けれど。
なんど思い返しても、はっきりと思い出せない部分があった。
記憶なんてそんな曖昧な物だと、そう言ってしまえばそれまでだけれど、どうもそんな感じのものではない。
例えば、先輩たちと初めて会ったとき。
私がなぜあの場所に居たのか、私がなぜ先輩たちにからかわれたりしたのか、思い出せない。
例えば、病に伏せていた彼女と何を話したのか。ほとんどの事は思い出せるのに、ところどころが空白のようになっていて虚ろだ。
他にもそんな虫食いみたいに穴が開いたような、おぼろげな部分がある。
その前後は思い出せるのに、抜け落ちたかのように思い出せない部分があるのだ。
その上、思い出そうとするとひどい頭痛に悩まされる。
まるでなにか警告するかのように、深く響く痛みだ。
これは、なんなのだろう。
気になり、思い出したくなる。
けれど、
なぜだか、とても嫌な予感がした。
――刀身に染み付いた脂を拭う。
念入りにふき取ってから、錆付かないように薄く油を塗った。
刀身に光を当てると鈍く反射する。
刀身をじっと眺めて、つい、ため息が漏れた。
……弱っている。
村正は名刀だ。
天下五刀に比べたら多少は劣るのかもしれないが、私の知る限り、村正の刀は最上級の武器だ。
それが、弱っている。
まだ戦闘に支障が出るほどではないけれど、細かな刃こぼれがあり、刀身についた僅かな傷が輝きを曇らせていた。
原因はここ最近の使用頻度。
そして、この世界での馬鹿げた戦闘。
元の世界にいたうちは良かったのだ。
相手も人間に限られていたし、使用する頻度も少なく、すぐに十分なケアが出来た。
それがアンジニティに来てからは、人間以外への想定外な使い方を強いられ、使用頻度も高くなり、手入れも十分に出来ていない。
このままでは使い物にならなくなるかもしれない。
そんなのは嫌だった。
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